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HOME > 法曹親和会・たより > 執行部だより - エッセイ・山岸幹事長 中越沖地震と危機管理
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中越沖地震と危機管理

山 岸 憲 司

7月14日(土)に新潟県の柏崎を訪れた。
ふる里である新潟県見附市で、「7月15日(日)に中学校の同窓会をやる」「還暦の記念の年であるから出席するように」との誘いがあり、重い腰を上げて出かけたのであるが、その途中、高校三年生の時に友人たちと合宿し夏休みの3週間程を過ごした柏崎の椎谷にあるお寺「華蔵院」をそのときの仲間2人とともに訪問する目的であった。

里帰りのときも仕事のときも新幹線でしか行ったことはなかったが、初めて友人の車に同乗し関越自動車道を北上した。
あいにくの台風の影響から雨模様であり、峠越えでは濃い霧がかかる高速道路を走り怖い思いもしたが、越後の山河はそれなりに美しい姿で迎えてくれた。

寺にたどり着くと、42年振りでお会いした先代の住職の奥様も、当時中学3年生であった当代の住職も温かく迎えてくださり、アルバムを見ながら皆で懐かしい思い出話に花を咲かせることができた。
当時は、毎朝早く起きて本堂の掃除を手伝い、住職の後ろに正座して般若心経を唱えるなど勤行のまねごとをし、午前中は勉強、昼は真っ黒になって海水浴、夜は書を読み青春を語るという充実した生活をさせていただいた夏休みであった。

そこから15分程歩いた高台に華蔵院の管理する「観音堂」がある。
観光PRの下手な新潟県ではあるが、知る人ぞ知る由緒ある観音堂である。
そこにも住職の案内で42年ぶりに行き中に入ってみた。何百年来そこに佇んでいる観音堂は、往時と全く変わりがなかった。
しかし、その高台から浜辺越しに眺める風景の中には、「柏崎刈羽原子力発電所」の煙突が何本も正面に見えて、何とも違和感があった。
原発を静かに見下ろす観音堂はさすがに老朽化が進んでおり、地震がきたら大丈夫かなと心配しながら振り返りつつ辞した。

3人で長岡に入り昔話をたっぷりとしながら痛飲し、翌日は、見附入りして母のご機嫌伺いをした後、今度は中学の同窓生たちと「近頃の還暦はなんと若々しいことか」と自画自賛しながら懐かしい時間を過ごしてまたまた痛飲したが、二次会は途中で抜け出し、あわただしく横浜の自宅に帰った。

ところがその正に翌日、朝目を覚ましてしばらくすると地震があった。揺れを感じてテレビを見ると柏崎を中心とする大地震のニュースが流れた。
妻から、「あなたの人生って、いつもこんな感じね。9.11テロの直後の中東在外公館査察旅行から帰国したときも、帰国の翌日に目を覚ますとアメリカのアフガニスタン空爆が始まったし。」とあきれられながらテレビに見入った。
火災が発生した原発の施設から昇る黒煙の映像を見て、初期消火体制が全くできていない状況にあきれながら、実家とお寺に電話をしてみたが、なかなか繋がらなかった。
ようやく通じた電話で、母も華蔵院の皆さんも全員無事とのことで安心したが、お寺の方は、お地蔵さんが倒れ、墓が倒れ、直したばかりの敷石に亀裂が入り、建物は無事だったものの中の位牌や蓮華等々あらゆるものが落下したり倒れたりして、かなりな被害が出た様子であった。
心配をした観音堂の方も中は大変な状態であったが、建物はなんとか無事だったようである。

思えば、43年前、高校二年生の時に、私たちは、大きな爪痕を残した新潟地震を経験している。
小泉前首相の「米百俵」の発言で有名になった長岡高校に通っていたが、ベビーブーマーである私たちは、古い体育館にベニヤで囲った急ごしらえの教室に詰め込まれていた。地震の際は、すごい音と揺れであり、ベニヤの壁が波打ち、机と椅子が飛び跳ねていた。長岡から見附まで、亀裂の入った家々を見ながら歩いて帰った記憶がある。
それでも、なにごとも体験することは貴重なことであり、地震があると、「あの新潟地震のときの揺れまでにはまだいってないな。」と自分を落ち着かせることができる。

新潟県では、3年前に山古志を中心に中越大地震があったばかりである。
「天災が忘れないうちにまたやってきた」と地元の人たちの中には悄然とする人も多いと聞く。なんとも心が痛む。
対応は早かったほうであるとは言っても、水と簡易トイレは数時間以内くらいには到着する体制がほしいし、3年前の経験から(五月雨式にくる食料品などの物品の仕分け・管理・配分の困難性、被災者といえども使いたくないほどの古着の分別とその後の処分など、大変さが目立ったのか)、個人からの救援物資は受け付けないというが、行政の救援・支援活動がどこまできめ細かくやれたか、ボランティアの方々との連携はうまくいっているかなど気になることは多い。
報道によると、新潟から神戸にかけて大規模な「ひずみ集中帯」があり地震の起きやすい構造があるとのこと。糸魚川―静岡構造線は昔習ったが、新潟-神戸ひずみ構造帯などというものがあるとは初めて知った。

何はともあれ、どんなことが起きるか分からないのであるから、日頃からの危機管理は重要である。
しかし、弁護士会においても事務所においても、危機管理が大切と分かってはいても、あるいは、他人の危機管理能力の欠如は批判したり笑ったりしていても、自分が危機に見舞われると慌てるものである。
そう遠くない時期に、東海あるいは関東に大地震が来るとされている。
あまり騒ぐとオオカミ少年と言われるので、静かに、いざという時に備えておきたいものである。
それよりも、不幸にして命を落としても後悔しないだけの生き様を残すことの方を心がけるか。
般若心経を読み直しながら考えてみたい。
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